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東京地方裁判所 昭和43年(むのイ)409号 決定 1968年7月04日

主文

東京地方検察庁検察官検事平野新が昭和四三年六月三〇日付でなした別紙第一記載の接見等に関する指定は、これを取消す。

理由

一本件申立の趣意は、別紙第二「準抗告申立書」中「申立の趣旨」及び「申立の理由」に記載のとおりである。

二当裁判所の事実の結果によれば、次のような事実が認められる。

(一)  被疑者は、前記被疑事件について、昭和四三年六月二八日逮捕され、ひきつづき同年六月三〇日王子警察署留置場(代用監獄)に勾留され、かつ、刑事訴訟法八一条により同法三九条一項に規定する者以外の者との接見等を公訴提起に至るまでの間禁止されたこと

(二)  東京地方検察庁検察官検事平野新は、前記被疑事件について、同年六月三〇日付で別紙第一記載のような「接見等に関する指定書」を発したこと(以下これを一般的指定という。)

(三)  王子警察署においては、在監中の被疑者に対し、検察官から接見等について一般的指定がなされた場合には、被疑者と弁護人又は弁護人となろうとする者との接見等は、その申出人がさらに検察官の発した接見等の日時、場所及び時間を具体的に指定した「指定書」を持参するかまたは検察官から電話によつて右のような指定があつた場合(以下これを具体的指定という。)のほかは、一般的にこれを拒否する取扱をしていること

三当裁判所の判断は、次のとおりである。

刑事訴訟法三九条一項は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者と弁護人又は弁護人となろうとする者との相互の接見等が原則として自由であることを規定したものであり、同条三項は、これに対する例外として、検察官らが捜査のため必要があるときに、所定の条件のもとに検察官らに右の接見等の日時、場所及び時間を指定することを認めた特則であると解せられる。すなわち、検察官らが同条三項に基づいて、右の接見等を特定の日時、場所及び時間に行うよう具体的に指定したときに、はじめて、その指定された日時、場所及び時間以外における接見等が禁止されることとなるのであり、右のような具体的指定がないかぎり、同条一項の定める原則により、右の接見等は、当然自由であると解すべきである。したがつて、検察官らが、被疑者又は弁護人の申出により接見等の具体的指定を行うまで、あらかじめ一般的に接見等を禁止する措置をとることは、接見等が本来自由であることを原則とした同条の趣旨に反し、同条三項の認める検察官らの権限を逸脱したものであるといわなければならない。

ところで、本件における検察官の一般的指定は、前記二の(二)及び(三)に認定した事実に徴すれば、被疑者又は弁護人の申出により検察官が具体的指定をしないかぎり、被疑者と弁護人との接見等を一般的に拒否すべき趣旨のものであり、かつ、検察官から一般的指定の指示をうけた王子警察署においては、右の一般的指定により現実に被疑者と弁護人との接見を一般的に拒否すべき取扱がなされていることが認められるのである。

してみれば、本件における検察官の接見等の一般的指定は、拘置監に対し、被疑者と弁護人との接見等を一般的に拒否すべき取扱をなさしめているかぎりにおいて、単なる拘置監に対する内部的な通告であるにとどまらず、すでに、被疑者と弁護人に対し、その接見等を規制する効果を生じているものとみるべきである。したがつて、右のような検察官の一般的指定は、右の接見等が具体的に拒否される事態が発生するのをまつまでもなく、それ自体違法な処分であるといわなければならない。そして、このような検察官の違法な処分が、同条三項に定められた権限を逸脱したものであることは、前述のとおりであつて、その意味では、右の一般的指定は、同項による処分とはいえないけれども、このように、同条一項によつて保障された接見等が不当に拒否された場合に、その処分に不服がある者は、同法四三〇条により準抗告を申し立てうるものと解するのが相当である(最高裁判所昭和四一年七月二六日決定・刑集二〇巻六号七二八頁参照)。

以上の理由により、本件準抗告の申立は理由があり、前記検察官の接見等に関する指定は取り消されるべきであるから、同法四三二条、四二六条二項により主文のとおり決定する。(堀江一夫)

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